逆巻ライトの心理を考察する
DIABOLIK LOVERSの逆巻ライトくんについて、極力、雰囲気アカデミックに考察していこうと思う。
無印、モアブラ、ヴァンカニ、ダクフェ、ルナパレ、ロスエデのライトルートのみ全クリア済み時点の考察。
ネタバレあります。
まず、彼の性格をざっくりと分類していくと、下記の通り。
軽薄、変態性癖、ムードメーカー、誠実味や真剣味の欠如、支配的。
以上、たぶん、この辺が序盤(無印あたり)特に強く出ているポイントだろう。
(支配的なのはまあそれがコンセプトの作品なので言うまでもなく。。。)
更にモアブラ以降の本編ではかなり掘り下げられていて、母からの性的虐待とそれに伴う兄弟関係や他人との距離感の葛藤についてが語られている。
性的虐待の被害者が性に奔放になってしまうというのは被害者心理としてありえる話で、
「被害者本人が被害に遭いやすい状況を作り出した」などと考えてしまったりする。
そこで「自分が淫らだからこういう事になっている」
「自分は穢れたので性的に奔放になっても良い」
と自己認識することで被害意識をすり減らそうとしたりする。
全て自分がしたくてしている、とか、自分も悪いと考えてしまう事がある。
それは誤った認識なのだが(明らかに性的虐待加害者が悪いので)そうやって誤認して自己認識していく。
ライトくんもかなりその辺りの性的被害が人格形成や性癖に影響を与えていて、
セックスをする事に抵抗感がなく、セックスを用いて他人との人間関係を(特に女性に対して)構築しようとする所がある。
また、男性に対しては向き合い方がわからず、幼児遊びの延長となってしまったセックスを遊具感覚で共用する事で人間関係を作ろうとする。
彼のNTRれ癖は主人公との関係性構築によって精神的成長を遂げると鳴りを潜めることから幼児性の象徴として描かれているため、そう考察する。
(実際のNTRれ癖の心理動向とは少し違うと思われる)
また、性的虐待被害者の精神的後遺症の特徴である物質乱用癖などもでており、作中ではやたらと媚薬や毒などを服用したりさせたりする描写が多い。
また、虐待を日常的に受け続けた事から他人の機嫌を冷静に観察するスキルが高くなるため、主人公の心理把握力が著しく高い。
(わかりやすい主人公ではあるが)
主人公以外にもその特徴は出ており、兄弟間や同級生に対しても本気で怒られないレベルの冗談を言っている事が多く、これはかなり高等な人間観察力が必要となる。
薄く広い人間関係を構築するテクニックが高いため、終始ギスギスしたディアラバ世界においてはムードメーカー的ポジションにおかれる。
支配的人間関係によって無印では主人公と関係性を築いていく訳だが、
それはなぜかというと、母から支配的愛情しか向けられた事がなかったため、方法のストックがないからだと思われる。
ディアラバ初期においては割とどのキャラも好感度マイナススタートからが多いのだが、
そもそも女性好きのライトだけは好感度が最低限のレベルまではあったように見られる。
それは、一般的に女性に向けられる上では最低な「性欲のみ」だが、
他キャラが「食事レベル≒物質」の好感度しかない中で唯一序盤から好感度が低いながらも女性として扱っているのは彼だけだ。
それにも関わらず、まあまあ序盤が酷いのは
女性との関わり方が支配的で性的搾取のみを目的としているため、そこが達成できないと機嫌を損なうところにある。
ただ、性的成熟のみが著しい事と心理把握能力が高い事で主人公を丸め込んでとにかく性的に搾取し続ける。(ついでに吸血も)
これは、支配的人間関係以外を構築する機会が著しく少なかったためだと考えられる。
次の作品であるモアブラでのテーマははっきりとゲスな言葉で言うと
「セフレから恋人へ」みたいなところのオマージュだと考えられるのだが、
「性的に奔放で自分でも好んでセックスを楽しんでいる」というアイデンティティが
主人公によって崩れてしまい、
実はセックスのみではなく他人から無償で愛されたかったし愛したかった部分と向き合う事になる。
この辺りは
幼いながらに無理矢理に大人にならざるを得なかったライトくんの人生観において
大きなギャップを生むことになる。
「愛されていなかったのではなく、自分がこれを望んでいたから与えてもらっていた」
と認識し、自分を淫乱だと定義づけることで愛を受けていたと自己肯定感を得ていたが、
主人公と誠実に向き合うと言う事は自己の淫乱性の否定であり、
そこを否定すると自己肯定感が失われてしまうのだ。
それによってライトくんは主人公と自分の心理状態を拒絶する。
ここで注目するのが、アダム覚醒時の吸血衝動で、主人公を遠ざけるのは兄弟のほとんどでの共通展開だったと思うのだが、
自傷に走るのはライトくんだけだと思う。
自己肯定感の欠如から毒を飲んで、(現代のメンヘラ的に当てはめると)ODしようとする。
ここら辺でやっと、性被害を被害として認識し向き合い始めるのだ。
モアブラでは、主人公の自殺に伴って、喪失感から主人公が大切である事を強く自覚して
主人公の気持ちを考えてゆく事になる。
これは、主人公の自殺展開が公式にルート内で起こってしまったため、
この後の作品では、常に喪失の恐怖と死への羨望を抱き続ける展開へと発展していく。
主人公の自殺未遂から主人公への失い難い好感度を自覚すると同時に吸血衝動が収まるため、ハッピーな雰囲気に包まれる訳だが、
バッドエンドでわかる通り、
嫉妬や独占欲の感情を覚えはしたが、
自己肯定感や喪失感への恐怖は拭えていないため、
関係が揺らぐと、
嫉妬に狂ったり、自殺願望を押し付けたりする。
このモアブラ内では、主人公の重要性の自覚と喪失への恐怖から、
主人公の気持ちを汲んで関係性の維持ができるようになったが、
根本的に、ライトくんの人格形成に影響を及ぼした性的虐待による自己肯定感の代替や健全性までは解決していない。
支配的関係性からの脱却はした、のみだ。
やはりEnding直前では裸で抱き合っているし、
「自分の異常性欲は否定しないものの、主人公の嫌がる事はしない」という他人への譲歩ができているに過ぎず
そもそも人間関係構築力が低かった訳ではないライトくんは、そんなに成長をしている訳ではない。
主人公がセフレから恋人に昇格しただけで、ライトくん自身の戦いや過去の傷は癒えていない。
そこからダクフェと続くわけだが、
ダクフェのテーマを無理やり作るとしたら喪失感への恐怖とアイデンティティの再構築かと思われる。
ヴァンパイアとして不老不死である自分と人間である主人公との命の重みの違いから
燻っていた自殺願望が混じり合い、
主人公の安全を確保するという大義名分を得たためにカールハインツと対峙していく。
一度主人公の自殺未遂を見届けてしまっている事から、主人公喪失感への恐怖が強い。
「主人公が本当に死んだ後どうしたらいいんだろう」という事はきっと幾度となく考えていたのだろう。
またこのルートではライトくんの存在意義が大幅に揺れてしまう事実を知り、動揺する。
というか、「どうして自分は生まれてきたんだろう」みたいな哲学的なところを考えさせられる。
父からも母からも愛されていなかった事と向き合い、性的虐待被害とネグレクトを認識する。
親にぶつけられなかった反抗期を迎えると
親が作ったシナリオ通りに動きたくないと、主人公を拒否して
親という絶対的存在から自己のアイデンティティを独立させていく。
Endingでは
その過程で親もまた人である事を知り、母からの被害を認識して気持ちの折り合いを付けていく。
親は親で自分は自分である、と完全に独立すると親の思惑だろうがなんだろうが自分がこうしたいならこれで良いと考えられるようになる。
Badでも、自分の気持ちに正直に、主人公を健気に愛し続けていく。
Badでは明らかに自分が加害者と認識しており、罪悪感に縛られる。
親への感情はBadでは特に描かれていないものの逆に加害する立場となった事で被害者感情との折り合いを数十年でつけていったものと考察できる。
そしてロストエデンなのだが、
ここでは明らかに性的虐待を被害と認識し終えたところで、
加害者への怒りよりも過去の自分への嫌悪感が強いように見受けられる。
親の能力を継ぐ事で、親を思い出し、
親から受けた被害を強く認識してしまう。
その事から自己嫌悪感があって、主人公とも距離を起きがちになっている。
このロストエデンのテーマを作ると、過去の自分への肯定感の創造と葛藤。
正直に言って、ここら辺まで来るとテーマが重過ぎて、シチュエーション重視のゲームではそこまで描いているつもりもないかも知れない。
結局の所、ライトくんはロストエデンのEndingでも過去の自分を自分のまま肯定できていないし、死への羨望もずっといだき続けている。
モアブラの自殺未遂がロスエデまで引き摺られている。
まあそれは当たり前で、性的虐待は過去の話だが、
自殺未遂は現在進行系の話で、自分が加害者となり主人公を自殺未遂させてしまったと認識できてしまうし、
自殺されてしまったり死なれてしまったらまた孤独になってしまう事を恐怖に感じている。
一度味わった恐怖だからだ。
ロストエデンで何故過去の決別ができなかったかというと、
和解すべきカールハインツが存在しないからではないだろうか。
話し合えないし理解もできないから許そうにも理解が及ばないのだ。
だからまたまたエデンを焼かれたり、引きこもったりする。
ライトくんは虐待以前から相手を理解する能力が高いので、
相手ありきで
考察できたり、折り合いつけたり、感情を殺したりできるのだろうけれど、
カールハインツは絶対に話し合わないので
ライトくん的には相手の心理が理解できなくて憎しみや絶望を処理できないと推察している。
虐待以前から相手を察する能力が高いという部分については、
ストーリーで描かれている部分ではなく、
犯罪心理的というか、状況推察的な認識である。
おそらくコーデリアがどのようなタイミングでヒステリックになり、
どのタイミングで収まるのかを冷静に理解している子供であったため、
男を誑かしてる時は機嫌が良い=その男と同じように振る舞ってみよう
みたいな状況が想像できる。
愚直なアヤトに愛と怒りをぶつけていて、
カナトは幼児退行することで愛情を引き出していて、
ライトくんはアヤトが怒られている所を見るのが嫌で間に入って気をそらしているうちに
大人びた振る舞いを覚えて、コーデリアの被害者へとなってしまったのではないか、と。
アヤトの人身御供となっている内に
悲しみを優越感に変換していく。
求められているから2人より上だと、
誤認することで苦痛から逃れる事になる。
それも、大人になるにつれてどんな意味を持つのか理解をしていき、
「自分は穢れていない。これが好きなんだ」と
自分に嘘をついて自分を肯定してきたのだろう。
辛さや苦しさに嘘の口実を作って慰めていく内に
自分の本心というものがカナリ歪んでしまったようだ。
長くなったのでまとめると
ライトくん尊い。
序盤の彼が好きだけど、今も好き。
以上。